本研究は、デファクト・スタンダード(事実上の業界標準)の形成に向けて各企業が取り組む状況について調査・分析することによって、競争優位の源泉が質的にどのように変化してきているか、そのメカニズムを明らかにすることに主眼がおかれている。 この目的に向け、初年度となる今年度は主に競争戦略理論の整理を実施したが、その内容から以下のことを確認することができた。 競争戦略に関する既存研究には、すでにいろいろな分析アプローチが提示されてきているが、主なものとしては次の3つ、すなわち「ポジショニング・アプローチ」、「資源依存アプローチ」、および「ゲーム・アプローチ」が挙げられる。これらのアプローチは、企業が市場で実行する競争戦略の類別や評価を可能とするのと同時に、新たに戦略を策定するような場合にも一定の効果が期待される。 一方、本研究で筆者が取り組んでいるデファクト・スタンダードの形成過程に関しても、90年以降、大きな変化を遂げてきていることがわかる。だが、その背景にはどのような原因があるのかについては、未だ不明瞭な状態のままである。 そこで、次年度においては、既存研究で明らかにされている各アプローチを「レンズ」に用いることで、デファクト・スタンダードの質的変遷を観察していく必要があるが、今年度はそれぞれのアプローチの整理を通じて競争戦略理論に対する既存研究のサーベイに努めた。
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