本研究は、第一に、男女雇用機会均等法の成立前後に男女同等の立場で採用された女性(以下、総合職・基幹職という)60名を対象に1993年と98年に行ったインタビュー調査の追跡調査であり、第二に、同法成立から10年を経て入社した第二世代30名を研究対象として調査を行うものである。 分析の結果得られた知見は次の通りである。大卒女性ホワイトカラーのキャリア形成について、特に初期キャリアに重要だとされたこと、すなわち適切な技能形成による将来のキャリア像を見出せること、および仕事と生活のバランスが取れることは、中期キャリア以降も就業継続の上で重要となっていることが明らかにされた。そして、企業が有能な人材を引き留めるためには、仕事と育児の両立を主眼にしたファミリーフレンドリー施策だけでは十分ではなく、独身者や子どもを持たない既婚者、配偶者との離死別により家族状況が変化した者を含めて、より包括的に仕事と個人・家族生活の調和が図れるような施策、すなわちワーク・ライフ・バランスの視点が必要である。また、総合職・基幹職の場合、個人・家族生活の調和が図れるのであれば、たとえいったん離職しても初職の経験を活かしたようなある一定の技能を必要とする仕事に従事している(する可能性がある)ことが明らかとなった。第二世代についても、いまだに企業においてパイオニア的存在である者も多いためか、適切な技能形成による将来のキャリア像を見出せること、および仕事と生活のバランスが取れることは、均等法世代と同様にキャリア形成上重要で、独身・既婚を問わず、この2点が満たされないと就業継続は困難である。
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