研究概要 |
本研究の焦点は,海外の製品開発拠点における知識の獲得,移転,活用を促進する組織メカニズムの構築過程を明らかにすることにある。この目的から,自動車産業を主な対象として,いくつかの少数の拠点(研究所やテクニカルセンター)に絞り込んで,事例に密着した形で深く調査を実行した。調査方法としては,インタビューを中心とした質的データと質問票によって収集される量的なデータとの継続的な比較(トライアンギュレーション)を通じて,実態に即した論理を生成していくというスタイルを取った。 その結果,海外拠点の製品開発でどのように組織能力が構築され,知識が獲得・活用されているのかについて,以下のような知見を得た。(1)現地の知識の活用と本国から移転された組織パターンの浸透とがトレードオフではなく補完関係にあること,(2)補完的な結合を促進するための本国の能力を雛型とした新しい能力の構築がなされていること,(3)海外に開発チームを配置する意図は潜在的な現地知識の具現化を狙った能力の構築にあること,(4)海外への組織ルーティンの移転には探索的な側面があり,それが海外独自の優位性の構築にとって重要であったこと,(5)研究拠点の発展経路は機能別の外部環境に適応する形で組織が形成され,一旦能力の分化が進んでから製品開発組織としての統合が進められること,の5つである。 この成果を受けて,今年は日本の製造業の海外R&D拠点全体を対象とした調査の実施に向けて,調査票の開発や予備調査などを実施し,最終的にこれを配布した。 なお,この知見の一部を,今年度は三菱国際コンファレンスで発表した。この他,いくつかの論文は現在投稿中もしくは投稿準備中である。
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