平成15年度は、次のような活動を通じ主として分散的なデータ収集に努めた。 (1)先行諸研究の検討を開始し、本年度業績である著書において示しているように研究開発戦略と研究開発組織における数点の仮説が導出された。また理論的基盤および研究フレームワークの確立が本年度の目標として掲げられていたが、著書に示されているような概括的な枠組みの開発にとどまった。 (2)札幌の情報関連企業で戦略立案やビジネスモデル形成に参画し、製品プロジェクトにおける経営戦略・オペレーション・技術開発などについて経営学的見地からの助言ならびに各種取引企業とのネットワーク形成やサプライヤーマネジメントなどを整備、および実際に研究開発に関与することでエスノグラフィカルなデータが収集された。なおこの活動は次年度も継続して行われる。 本年度は技術者であったバックグラウンドを活かし、積極的に研究開発活動に参画することで地域企業の技術者や公設試験場の研究者と研究開発に関する知識を楳介として交流する中から、かなり確度の高い実践的なデータが収集された。しかし取り扱う研究開発活動の多くは先端的技術を扱うものであり秘匿事項が多い。そのため本年度の業績は著書で示したような概括的、概念的なモデル開発に留まっている。そこで次年度では、これらの秘匿されている諸事例について開示可能なものもしくは匿名で公開可能なものなどを整理し詳細な事例研究を敢行し学術雑誌などに投稿していきたい。その上で本年度実現する予定であった研究フレームワークをより明確な形で確立するとともに次年度の研究計画予定を進めていこうと考えている。
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