研究概要 |
本年度は,企業の社会戦略やステークホルダーを考える上で重要な立場にあるNPOに焦点をあてて,企業の社会戦略とNPO,企業とNPOのパートナーシップに関する国内調査を進めた.その結果を,論文と図書において発表している. 企業の社会性を考える上で,従来社会的責任と貢献(CSR)の考え方が論じられてきているが,より広く,また戦略的視点から社会性をとらえ,その上で具体的な事例として,企業とNPOのさまざまな関係を調査・検討して,企業とNPOのパートナーシップという手段を用いた効果的な企業の社会戦略のあり方を論じている. 調査を進め,成果物としてまとめていくうちに,上記テーマに関して,より深い問題設定を行っていく必要性が生じて,日本だけでなく,より多様な現象が見られる地域で,密着した調査を進めることとなった.したがって,NPOやCSRに関して先進的地域であるアメリカ・サンフランシスコを中心としたベイエリアで,単なるインタビュー調査だけでなく,参与観察を含む形での調査が可能な形で,海外調査を行っている. 日本太平洋資料ネットワークが企画する「NPOボランティア体験プログラム」への参加と自主的な調査を組み合わせることにより,サンフランシスコ,オークランドを中心としたアメリカのベイエリアにおけるNPO,企業,大学を訪問し「企業の社会戦略とステークホルダー・マネジメント」に関する参与観察,インタビュー調査,資料収集,意見交換を行った. ベイエリアで展開する8つのNPOにおいて,実際にボランティア活動に参加し参与観察調査を実施して,その最中および前後にスタッフや関係者からインタビュー調査と各種資料収集を行った.またベイエリア限定で活動を展開する2つの企業においては,コミュニティ・ベースド・ビジネスの実態と,そのミッションや社会性についてのインタビュー調査と資料収集を実施した.UCバークレーでは,サンフランシスコを中心とするベイエリアのCSRに関する資料収集を行った.その他にも「アメリカ社会の多様性と企業,NPOの関係」といったセミナーに参加して,ディスカッションと資料収集を行った. これら海外調査によって,企業の社会戦略やステークホルダー・マネジメントを考える上で,コミュニティ,ダイバーシティといった点についてもフレームワークに入れていく必要があることを把握した.
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