近年、マネジメントとリーダーシップは異なる概念であるという前提に立つ研究が多く見られる。ごく大まかには、マネジメント=決められたことを決められたとおりにきれいに実行すること、リーダーシップ=新たなビジョンを示し、組織の進むべき方向を示すこと、とまとめることが可能である。今日の経営者育成において考慮されるべきは、リーダーシップを発揮しうる人材を育成することである。 今年度の研究は、主に以上のようなリーダーシップについて文献研究を行った。おもな研究対象は、BassやAvolioによって研究が進められてきた変革型リーダーシップ理論、House、Conger、Kanungoらによって研究が進められてきたカリスマリーダーシップ理論である。明らかになった点は、以下のようにまとめられる。 1 1980年代後半以降の研究成果を概観してみた限りでは、変革型理論は、変革型リーダーの行動を数次元に集約して記述することに関心を注ぎ、カリスマ型理論は、実際に組織変革が行われる過程を数段階に示し、段階ごとのリーダーの行動を記述することについて関心を注いでいる。 2 1990年代にはいると、リーダーシップの倫理性が問題とされるようになる。1990年代後半以降、組織が引き起こした倫理上の問題の原因を、リーダー自身の利己的な動機によって説明する試みがなされている。利他的な動機に基づく「本質的変革型(authentic transformational)リーダーシップ」の概念が提唱されるが、「利他」の範囲が、曖昧であるという問題点がある。
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