本研究の目的は、MUSASHIの企業導入などをケースとして、新しい情報技術をビジネスプロセスに統合する組織・戦略過程の理論モデルを構築し、さらに情報技術の内部構成要素と理論モデルの関係を明らかにすることである。 本年度は経営的観点から求められる情報技術のあり方を検討した。情報システムの設計思想、考え方であるシステムアーキテクチャに焦点を当て、環境適応的なシステムアーキテクチャの概念を明らかにした。こうした考え方とオープンソースプラットフォームMUSASHIとの関係を明らかにし、その妥当性を検討した。システムアーキテクチャに唯一最善のものは存在せず、環境・企業の戦略に大きく依存しており、環境適応的な情報システムの特性が重要であることが明らかになった。 また組織プロセスからの検討として、チャンス発見概念を用いてシナリオコミュニケーションのフレームワークを提示した。データマイニングによる新しい知識発見のプロセスは、両者がもつ独自のシナリオの交換プロセスとして表すことができる。我々はそれらのシナリオ交換の分類フレームワークをシナリオコミュニケーションとして概念化し、理論的な検討を行った。チャンス発見は情報技術を活用しながらその知見を組織に統合するために、様々な組織内のシナリオがメンバー間でやり取りされ、新しいシナリオを創出するプロセスとして理解することができる。そのために「場」を意図的に作ることや共通の「経験」を持つことが、シナリオコミュニケーションの推進力となることを明らかにした。
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