本研究では、日本ホテル企業の国際化と国際企業行動について考察した。特に近年の動向として、欧米市場からの撤退と国内市場への集中が顕著であり、その要因について調査した。具体的な研究成果は次の通りである。 1)日本ホテル企業のアジアおよび国内市場への集中 日本ホテル企業は、国際的なブランド知名度の弱さから、競争の激しい欧米市場ではホテル契約パートナーを見つけることが出来ず、日系企業との合弁出資形態(直接投資による直営方式)が多く見られた。そのため、不況時による負債の拡大と財務管理の失敗により、欧米市場から撤退という結果になった。そこで日本ホテル企業は、現在は資本関与の少ない契約関係(ホテル運営契約、フランチャイズ契約)への集中を目指しており、それゆえ、ブランドが通用しやすく事業パートナーを獲得しやすいアジアおよび国内市場へ集中し始めている。 2)国際マーケテイング・ネットワークの構築 ホテル数では圧倒的に欧米企業に及ばない日本ホテル企業は、世界市場においてマーケテイング・ネットワークの構築が急務である。そこで、日本ホテル企業は外資系ホテルチェーンとのマーケテイング提携という方法を選択し、マーケテイングの強化に努めている。 3)外資ホテル参入に対する日本ホテル企業の対応 相次ぐ外資系ホテル企業の国内参入に対して、第一に日本ホテル企業は国内市場での顧客獲得に専念している。従来の顧客層に加えて、新規顧客の開拓、若年層への販売促進、特定企業との法人契約の拡大などを試みている。第二に、業態の変化および多様化により経営効率化を図っている。具体的には従来の宴会・料飲部門への偏重から、宿泊特化型のホテル経営への転身である。 次年度では、特に、日本ホテル企業の競争力という観点からその国際企業行動を考察する。特に、成長の著しいアジア系ホテル企業との比較において、日本ホテル企業の国際企業行動の本質に迫る。
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