平成15年度の研究目的は、茶系飲料を題材とした実験を行い、理論モデルの経験的妥当性を確かめることにあった。今年度はその準備作業として、実験刺激および操作化など、実験条件にかかわる考察を行ってきた。 本研究において提示されている理論モデルは、低関与状況下にある消費者の行動が経時的にいかなる変化を遂げていくのか、これらを行動科学的な視点から捉えようとするものである。この理論モデルは、内発的動機付けと外発的動機付けという2タイプの「動機付け」(土橋2000;2001)、限定的な情報処理型と環境依存型という2タイプの「情報処理パターン」(土橋2003)、購買・使用経験からの「学習」、消費者の情報処理能力を示す「製品判断力」という4要因から構成されており、これらが特定の因果関係を保ちながら経時的に変化することが仮定されている。 実験1ではこの理論モデルの起点をなす2タイプの動機付けの関係が、実験2ではこれに続く消費者の情報処理パターン、学習のタイプ、製品判断力の向上の有無といった側面を検討することが予定されていた。消費者の動機付けに働きかけるものとして、本研究では「セールス・プロモーション」を想定することとした。セールス・プロモーションは、低関与状況下における消費者に対して効果的なマーケティング活動として認識されているというのがその理由である。しかしながら、セールス・プロモーションには多様なタイプがあり、実験条件を設定するためには、それぞれがいかなるタイプの動機付けに作用するのかを特定化する必要があった。そこで既存研究を概観し、これを考察した結果、内発的動機付けに影響を与えるものとしてサンプリングや実演販売、外発的動機付けに影響を与えるものとして値引き、特別陳列、チラシ、増量パックなどが該当するという結論に至っている。これを基礎として、平成16年度はより詳細な実験条件を設定し、実験を実施する予定である。
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