本研究の目的は、低関与状況下にある消費者の行動が経時的にいかなる変化を遂げていくのかという点を行動科学的な視点からモデル化するとともに、その経験的妥当性を確かめるところにあった。その準備作業として平成15年度では、実験条件に関する考察を「セールス・プロモーション」とのかかわりにおいて考察してきた。本研究における理論モデルの鍵概念のひとつは、「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」という2タイプの動機づけであるが、前者に影響を与えるものとしてサンプリングや実演販売、後者に影響を与えるものとして値引き、特別陳列、チラシ、増量パックなどが該当するという結論に至っている。 この研究結果を基礎として平成16年度では、予備的な質問紙実験が行われた。経験的テストにかけられたのは、「低関与状況下における消費者の選択場面では、内発的動機づけと外発的動機づけが、その相対的強度という点においてトレードオフの関係にある」という仮説である。具体的には、値引き、増量パックといった2種類のセールス・プロモーションを外発的動機づけの誘因とみなし、それらが与えられているときと、除去された後の特定ブランドに対する購買意図を比較した。しかしながら、統計的に有意な差はみられず、仮説は支持されなかった。その理由としては、操作化の問題、従属変数を購買意図とした点などが考えられる。今後は、これらの問題点を再度考察し、修正を施したうえで、本調査を実施していく必要があると思われる。
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