研究概要 |
本研究の主たる目的は,近年の金融不安や不良債権,銀行の貸し渋り問題といった背景のもと,わが国の銀行が行う会計手続き選択に係る裁量行動と,それが貸出行動・不良債権処理に及ぼす影響,そしてそれらが株式市場においてどのように評価されるかに関して,実証研究を通じた検討を行うことである。平成15年度は,(1)銀行の裁量的な会計手続選択が貸出行動に及ぼした影響,(2)同会計手続選択が不良債権償却に及ぼした影響,(3)同会計手続選択が株式市場でどのように判断されたかについて分析することに力点を置いた。 まず,本研究は銀行の会計情報等と株価情報とを用いた計量分析に基づく実証研究であるため,研究初年度として,有価証券報告書,IR・ディスクロージャー誌,会社案内やアニュアルレポート等のデータの調査・収集に最も力を入れた。本務校が保有していない貴重なデータベース(日経NEEDS金融財務データ)を購入した他,他大学や研究機関,証券情報センター,図書館などでデータ収集しデータベース化を手作業にて行った。 データベース化の作業は継続年度(平成16年度と平成17年度)の研究の基礎となるため非常に時間をかけ正確かつ入念に行ったため,現時点で実証分析の成果を公表するにはいたっていない。しかしながら,平成15年度において多年度にわたる広範なデータベースの構築を一定程度終えることができたため,これからの継続年度において,銀行が行う会計手続選択を通じた裁量的な行動,その銀行の裁量的会計行動が貸出行動や不良債権償却に対して与える影響,それらに対して株式市場が示す反応や評価,銀行監督規制と会計規制との関係・影響,銀行が会計上の選択を行うにあたって影響する自己資本比率規制などの要因,そして会計基準・会計規制が及ぼす経済的影響等に関する経験的証拠を得ることを予定している。
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