研究概要 |
H16年度の研究実施計画は,「1.新須磨病院でのBSC全院展開」「2.成果の分析」「3.アクションリサーチ手法の確立」であった。以下ではこの順にしたがってH16年度の研究実績を述べる。 1.新須磨病院でのBSC全院展開 H15年度に実施した整形外科のBSC導入の成功を受け,H16年4月より全院にBSCの展開を行った。当初は8月以降に本格運用する予定であったが,結果的にはH17年2月まで整備に時間がかかった。そして,3月に試験運用を行った。本格運用については,H17年4月の開始を予定している。 2.成果の分析 H15年度に実施した整形外科でのアクションリサーチをベースに,財務・非財務データを入手し,定量的分析を行った。台湾国立政治大学アン・ウー教授,カリフォルニア大学アーバイン校のジョアンナ・ホー教授との意見交換を行った。導入前6ヶ月を含む計19ヶ月分の月次データを時系列回帰分析した。特に興味深い分析結果として,筆者は導入期を測定以前と以後とに分け,Kaplanらの定性的なケーススタディでの主張を実証したことである。すなわち,測定以前の戦略マップ作成,イニシアティブ設定を通じた「戦略の翻訳」の影響を独立的に捕捉できた。その成果は,日本原価計算研究学会で発表した。また,2005年ヨーロッパ会計学会でも報告を行う予定である。 3.アクションリサーチ手法の確立 アクションリサーチ手法はこれまで定性的なアプローチとして認識されてきたが,上記のとおりアクションリサーチを通じて財務・非財務の実態データを入手するという手法を確立した。これは,定性的な観察との組み合わせによって厳密かつ詳細な分析を可能とする新しい接近方法と言える。
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