本研究は、近年の内部統制の重要性の高まり、とくに内部統制報告の制度化の方向性が示される中で、監査人の内部統制評定の実態を把握すべく、各国における内部統制の整備状況、ならびに、外部監査における内部統制評定及びその報告の状況を把握することを課題としている。とくに本年度は、日本と英国の監査人を被験者とした実験研究を実施した。その結果、内部統制評定は、日英の監査人の間で、大きな差異があり、それが監査報酬額の差異の大きな要因であると解されることが明らかとなった。その結果は、後掲の『會計』掲載の論文として公表している。 同論文においては、かかる内部統制評定の差異は、監査実務の充実を図るに当たっても、また内部統制報告の制度化の議論に当たっても、十分考慮されなければならない問題であるとの観点から、とくに内部統制報告に関しては、日本の監査及び監査人の判断における内部統制評定の位置づけが、必ずしも海外と同じとは考えられないことから、導入に当たっては、日本の実情を十分考慮する必要性が認められる、と結論付けている。 なお、今後は、本研究の結果を踏まえて、日本においても公表資料が整う監査報酬額の実態に基づく国際比較研究、アメリカ等において実際に内部統制報告が実施された後の内部統制評定に係る監査人の判断との比較研究、あるいは、近年導入されているリスク評価手法に基づく、より一層精緻なモデルのもとでの研究が必要と考えられる。
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