本年度は、東京証券取引所第一部および第二部上場企業を対象に、制度化されたディスクロージャー情報の収集および分析を優先して行った。対象は、(1)業績予想修正および(2)決算発表日である。 第一に、業績予想修正情報に関しては、制度化された1989年以降のうち1994年から1998年までの5年間のデータを収集している段階にある。次年度は、残りの期間のデータを収集するとともに、業績予想修正の前提となる業績予想データの収集も同時に行う予定である。 第二に、決算発表日データに関しては、日本経済新聞の縮刷版に記載されている1985年から2001までの17年間の個別本決算発表日、連結本決算発表日、個別中間決算発表日および連結中間決算発表日のデータの入力が終了している段階である。この結果、本研究の全対象期間である1975年から2004年までの30年間のうち半分以上が終了したことになる。 この収集したデータの一部を使い、東証上場企業をサンプルとして、わが国固有の決算発表の集中化現象が投資家の行動に及ぼす影響について実証分析を行った。その結果は、決算発表の集中化が開示された会計情報に対する投資家の速やかな反応を阻害しているとの考え方と一致するものであった。この結果は、決算発表の集中化の緩和を要請している東証にその制度的な要請の論拠を与えると考えられる。すなわち、社会的な希少資源である資本の最適配分を公正に、そして速やかに実現するためには、集中化の緩和が必須であるというものである。このように制度的要請の論拠を提示することは非常に意義深いと考えられる。それゆえ、次年度以降もデータの収集状況に応じて、決算発表の集中化が引き起こす諸々の問題について検討する予定である。
|