平成17年度は、とくに発展途上国において設定・公表されている、会計基準設定のための概念フレームワークを中心に研究を進めた。当初は、近年会計制度の改革が早急なペースで進むアジア諸国で公表された概念フレームワークを、広く研究する計画であった。しかし、すべてのアジア諸国を網羅することの困難性を考慮し、会計制度の発達と経済発展との関連性を考察するという観点から、インド、マレーシア、韓国の3カ国に焦点を絞った。ちなみに、世界銀行の定める、国民所得の大きさによる経済発展段階の類型によれば、インドはLow Income Economy、マレーシアはUpper Middle Income Economyにそれぞれ属し、韓国はここ数年でHigh Income Economyに昇格している。 マレーシアの概念フレームワークについては、平成16年度にある程度の研究成果を発表していることもあり、平成17年度はインド、韓国の両国に研究の焦点を絞った。インドでは、政府による経済自由化政策の一環として、会計制度改革の重要性が認識される一方、実際の会計制度改革は民間団体である、インド勅許会計士協会によって進められていることが明らかとなった。その中で、インドの概念フレームワークは、国際会計基準審議会(IASB)が1989年に公表した概念フレームワークをほぼそのまま導入するとともに、その他の会計基準についても、2000年以降、最新のIAS(国際会計基準)/IFRS(国際財務報告基準)をほぼそのままの形で導入していることが明らかとなった。その一方で、インドでは、会計基準を企業に適用するための諸制度、さらにはその適用状況を監視するための諸制度がまったく欠けていることも明らかとなった。このことは、インドでは先進国で一般に言われているような、投資意思決定有用性を中心とした会計情報に対するニーズが、国内ではいまだ高まっておらず、海外からの直接投資を誘致するためのインフラ整備の一環として、会計制度整備が進んでいる段階にあることの証左であるように考えられる。 韓国については、平成17年度の後半から本格的に研究を開始したが、各種文書の日本語訳の検討などに時間をとられ、残念ながら年内に研究を完成するには至らなかった。韓国については継続課題としていきたい。
|