本研究では、関東圏の下層建設労働者の就労構造の変容について、とくに飯場などの職住一体化した職場の実態に焦点をあてて明らかにすることを目的としている。本年度の研究内容は、(1)日雇労働組合の争議資料の入手とデータベース化のための整理、(2)野宿者および日雇労働者、組合関係者への聞き取り調査、(3)建設業の企業調査のための調査準備、が主な柱であった。 (1)については、東京の日雇労働組合から昨年度すでに入手していた一部の争議資料について整理を行い、分析・執筆を行った(一つ目の研究発表参照)。そこからは、最末端の飯場型労働の劣悪な労働条件が明らかになった。しかし、本格的に過去の争議ケースの入手を計画していた矢先、組合側で資料が焼失するという大変残念な事態にみまわれ、データベース化の計画自体は断念せざるをえなかった。ただ、少なくとも新しく取り組まれた今年度の争議ケースについて、可能なものは収集につとめた。 (2)については、週に一度の組合を中心とした労働相談への参加、日雇労働市場である「山谷」の越年・越冬の取り組みへの参加、また個人的に野宿者の元への訪問などを通して、数回にわたる聞き取り調査と参与観察を行ってきた。とくに越年・越冬の取り組みの際には、インフォーマルにではあるが、十数人の労働者に飯場の労働条件等の話を聞くことができた。当事者からの聞き取り調査は、現在も遂行中である。 (3)については、調査項目の検討を行った。 さらに、基本的な書籍と行政資料の収集を行った。例えば消防庁の行った建設業附属寄宿舎(建設作業員宿舎)の調査結果など、既存の行政資料で関連すると思われるものは極力収集に努めた。
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