(1)シンガポール多人種主義について、多くのシンガポール人が暮す団地というエスニシティ的に無機質な居住空間で現地調査を行い、シンガポール多人種主義社会モデルを構築する。 (2)このモデルを比較の軸として用い、中国及びマレーシアの諸都市をとりあげて華人社会の比較社会学的研究を行う。 本研究の以上二つの目的のうち、今年度は(1)を中心に研究を行った。 2003年9月より、10月までと、12月の計二回シンガポールへ行き、国家主導のフォーマルエスニシティと団地住民が日常生活でつくり出すインフォーマルエスニシティとの相互関係に着目し、現地調査を行った。フォーマルエスニシティに比べてインフォーマルエスニシティについては研究が難しい中、取り壊しに指定されたTH団地において、華人、マレー人、インド人、その他の住民による日常的な諸活動に参加する等して、取り壊しに直面する中で築かれる住民関係について深く調査した。TJ団地では、各人種をこえた団地の焦点としての役割を果す一方で取り壊しに指定された屋台センターについて、調査研究を進めた。両エスニシティの相互関係については、多人種主義をめぐる連続性と分断に着目し、多人種主義によって団地住民のコミュナルなつながりが分断されかねないせめぎ合いを明らかにした。以上の調査を補強するため、図書館で必要な文献資料や新聞記事を収集し、現地研究者と意見交換を行った。帰国後は、調査結果をまとめ、これまでの研究の蓄積と結びつけ、現在は研究成果を論文としてまとめている最中である。 (2)については、2003年12月末から翌1月にかけて、マレーシアのクアラルンプールとイポー、ペナンヘ行き、次年度から本格的に調査するための準備を行った。
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