15年度の目標として、土地所有にまつわる現象の前提となる、山村の社会組織についてあきらかにすることを掲げ、そのためにタイプの異なる4つの農山村(下記)を調査する予定であった。 (1)現在、混住化がすすみつつも、ムラが強い入会権を保持している空間 (2)かつて、狩猟や焼畑を中心に行ってきて、空間的・人的な広がりにおいて、農村とはかなりことなった社会組織を形成している奥地山村の空間 (3)焼畑地域ほど奥山を利用しなかった山村で、山や財産が一部の者に集積している山村の空間 (4)農村地域の社会空間 これらのうち、実現できたのは、(1)と(2)である。それぞれについて、阿蘇・諸塚・佐賀で調査を行い、とくに入会権(阿蘇)と狩猟(諸塚村)について調査を行った。このように調査地域が集中したのは、市町村合併や権利更新などの動きがみられたため、インテンシブな調査に集中したほうがよいと判断したためである。 ここに詳しく書くことはできないが、現在のところで明らかになったことは、かつてとは空間の意味も利用形態も変わりつつある場所(阿蘇の草原)に対して、地元の人びとは自分たちで管理しようとし、管理するのが最善の方法であると確信をもっていることである。また、狩猟については、かつての狩猟についての聞き取りを進めることができた。 一方で、これらの調査の基本となる考え方については「『在地性』の視点から農山村を考える』(2003)というテーマで論文として発表した。
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