本年は、3年間の研究期間における2年目に当たる。研究内容は、グローバル化が進行する中で、西欧先進国がどのような雇用政策をとっているのかについての文献研究を中心に行った。一般にグローバル化の中での雇用の流動化というと、失業率の増加や社会不安の増大と安易に結ばれがちである。しかし、現実に失業率が増加しているのは、アメリカ、ドイツ、フランス、そして日本といった国々であり、北欧諸国、オランダ、ベルギー、スペイン、ポルトガル、アイルランドといった国々では、グローバル化の進行=失業率の増加ということにはつながっていない。むしろ、後者の国々では、失業率が1990年代を通して低下しているのである。もちろん、これら失業率が低下した国々においても、定年まで就労できる長期雇用は減少し、短期の有期雇用が増えているのである。すなわち、短期の有期雇用の増加が必然的に失業率の増加につながるのでもなければ、社会不安を引き起こすものでもないのである。 本年度の研究の成果は、下記の文献に部分的に発表している。理論的に世界における雇用の流動化を論じたものとして、丹野清人、2004、「グローバリゼーションと労働市場改革-不安定就労の視点から」『ピープルズプラン』28号を発表した。さらに、日本における具体的な問題点を、梶田孝道・丹野清人・樋口道人、2005、『顔の見えない定住化』名古屋大学出版会において、日本における外国人労働者の問題から明らかにした。なお『顔の見えない定住化』は日本学術振興会より、出版助成を受けている。 本年は、諸外国における雇用の流動化の実態と各国政府の対応を研究してきたので、最後に日本における雇用の流動化の実態と政府が取るべき施策を明らかにするための、アンケート調査を行った。アンケート調査は郵送票が200、留置票が1000の合計1200である。
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