研究概要 |
高齢化と医療・福祉予算の肥大化を踏まえ、先進諸国では、医療・福祉領域における国庫負担の削減・民営化が議論されている。政策の成功は民意にかかっているが、民意の実態については不明な点が多い。果たして、これらの領域において各国民の政府への期待はどのようになっているのか。民意が国ごとに異なるとすれば、それは何故か。(1)医療、(2)高齢者福祉といった領域における各国民の政府への役割期待意識とこれを規定する要因を複数レベル(個人・国)において分析することにより、これらの疑問について新たな知見が得られると期待される。本研究は、このような問題意識にたって、日本を含む26カ国データ(ISSP「政府の役割についての意識調査」1996年)を、各国のマクロデータ(World Bank資料等をもとに独自に作成)とリンクさせ、最新の量的研究手法(HLM)を用いて分析した。 具体的には、まず、奈良女子大学図書館、京都大学図書館、厚生労働省図書館等の利用や関連学会・研究会への参加を通じて、各国の医療・福祉政策についての文献及び社会意識に関する既存研究の文献検索・収集・複写を実施した。次にWorld Bank, United Nations等統計資料を基に、26ヶ国についてのデータを入力し、国レベルの統計データを作成した。また、ミシガン大学ICPSRからISSPの個人レベルデータを入手した。これらのデータをそれぞれSPSS等を用いてクリーニングした上で関連づけ、HLMデータを作成した。そして、このデータを使って、HLMによる要因分析を行った。来年度は分析結果をとりまとめ、学会・研究会等で発表していく予定である。
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