今年度の研究実施目標として、3つを掲げた。第1に、コミュニティ・コーディネーションの概念構築をしていく理論的研究、第2に中国で実地調査を行い、「社区建設(コミュニティづくり)」の特徴的な事例を集めること、第3に、横浜市と神戸市、京都市で事例選定のための予備調査を行うことである。内容的には、「コミュニティの理念・理解に関する中国と日本の相違」をある程度明らかにし、提唱されているコミュニティづくりの方向性を確認した上で、コミュニティづくりにおいて実質的に重要なコーディネート機能を果たす存在を見極めることを目的としていた。科学研究費は主に中国調査と日本国内での予備調査、及び書籍費に用いた。 この目的を追求していくために、4月から7月までには主にインターネットや文献などで情報を収集し、中国での実地調査に備える一方で、理論研究を進めた。その成果を「道具としてのNPO」というタイトルで、コミュニティ・コーディネート機能を担う存在としてのNPOのあり方を探るための論文にまとめている(平成16年7月に掲載予定)。8月には中国での実地調査を実施し、上海、沈陽、長春という3つの都市で特徴的な事例を探し求めた。上海では、NPOがコミュニティ施設の運営を担うというユニークな事例に出会い、その事例に関する調査の成果を論文「社区と社団」にまとめた(平成16年5月掲載予定)。9月から1月にかけては文献などの理論研究を中心に進め、NPOがコミュニティ・コーディネーションの担い手として、独立性を保持するための条件の検討を行い、その1つである「寄付による財源確保」の問題を、オンライン・ドネーションの観点から考察した(平成16年9月に刊行予定の書籍に収録)。さらに2月から3月にかけて、横浜市と神戸市、京都市で予備調査を行い、今後本調査で対象とする事例の選定を行った。
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