本年度は補足調査と、調査結果や研究の成果を報告すること、更に課題を発見し今後の研究につなげていくという位置づけで研究を行ってきた。科学研究費はほとんど補足調査と成果報告のための旅費に使用した。東アジアにおけるコミュニティ・コーディネーションに関して、本研究は「コミュニティの性質、コミュニティへのニーズに基づいたコーディネーション」という視点に立ち、「顔の見える狭い範囲内で地理的コミュニティを理解する重要性」「コミュニティにおける異質で多様な組織の存在の重要性」「コーディネーションの制度化よりも先に、自発的、自生的な隣人間、組織間関係を大切にする方向性」「自発的・自生的な隣人関係が成立するための物理的、文化的諸条件を検討する重要性」「NPOが戦略的にコミュニティを活動空間としていく重要性」「NPOのネットワーク化がコミュニティにおけるNPOの地位を向上させる」などの見解を得ることができた。 4月から5月にかけては、コミュニティにおける多様な組織の可能性について論じた文章を、『日中社会学研究』第13号に研究ノートとして掲載した。6月には北京でコミュニティ活動を行うNPOに関する補足調査を行った。7月には横浜市で補足調査を行い、物理的、地理的条件とコミュニティ活動との関連性、NPOのネットワーク化とコミュニティにおけるNPOの地位との関連性に関する調査を行った。その成果は平成18年度に論文にまとめる予定である。8月には中国の長春市、ハルピン市を訪れ、長春市では新開発団地という顔の見えるコミュニティに住み込み、参与観察を行った。そこでは不動産販売の方法と隣人関係形成との関連性を発見し、『アジア遊学』の特集の一本としてまとめたと同時に、詳細については2006年5月に開催される地域社会学会で発表する予定である。12月には社会格差と社区をテーマに『駒澤社会学研究』に論文をまとめた。2006年3月には研究成果の報告をするために上海と北京を訪れ(航空券代のみ科学研究費から支出)、仙台で開催された公共哲学京都フォーラムin東北大学会議でも発表を行った。そしてこの3年間の研究を踏まえ、『草の根の中国』というタイトルで平成19年までに編著を出版する運びとなっている。
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