本年度は研究実施計画に従って、まず本調査の再設計を行った。前年度に明らかになった在宅福祉NPOの地域社会の構成員との「関係性」の構築が、相互作用を孕んでNPOにどのような影響を及ぼすかについて整理したいと考えたからである。 そこで地方自治体とNPOとの関係性に着目したが、その際、概念整理のためにローカル・ガバナンス論に着目し、イギリスの行政・NPO間のパートナーシップ施策、社会的排除(Social Exclusion)対策について検討した。 本調査では、こうした概念の検討を実施しつつ、在宅福祉NPOに対してヒアリングを実施した。その結果、これら組織の実施するサービスが単なる高齢者福祉サービスの供給の多様化(「複合化」)を越え、より広範な地域社会の課題に対峙する傾向が明らかになった。精神障害者に対する地域支援などもその一例である。また、NPOの事業として、「アドボカシー機能の強化」と「商業化(Commercialization)」が同時進行している事例が存在し、地域の諸アクターとの連携を通して、まちづくり等にも積極的に関与しつつあった。 これらの事例研究を通して、NPOの実施する事業に焦点を当てるだけでなく、NPOの「公共」概念の変遷を分析する必要があることが明らかになった。この点は、外部から「目にみえにくい(invisible)」要素となる。そのため、最終年度となる次年度は、この点について再度ヒアリングを実施しながら、組織論アプローチ、政治学的アプローチを用いて、最終報告としてまとめたいと考えている。
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