本年度の研究実施計画に沿って、以下のように研究作業を遂行した。 研究作業 1:旧職員への聞き取り 永年勤続の元保母に聞き取りを行い、冊子『元仙台基督教育児院保姆山田省子氏聞き取り記録』としてまとめた。聞き取りでは養護実践の具体が多く語られ、今日の実践に継受される部分が少なくないと確認されたが、話し手から「今の養護はケースワークで、昔(1930年代)のは子育て」という本質的な違いと考えられる提起がなされ、次年度の検討の方向性と課題が与えられた。 研究作業 2:写真資料の整理と電子処理、解説の聞き取り 1920年代から1940年代にわたる育児院の写真帳について、その時期に職にあった旧職員から写真毎の解説を得、電子処理した写真と併せて『山田省子氏所有仙台基督教育児院アルバム(昭和30年代頃)解説』『山田省子氏所有仙台基督教育児院赤アルバム(1)解説』『山田省子氏所有仙台基督教育児院赤アルバム(2)解説』『第二次世界大戦前・戦中期 ある育児院保姆と家族の記録』の4冊子としてまとめた。その結果、1930年代周辺の実践の様子が、写真と解説から具体的に理解された。収められた写真のうちプロのカメラマンによる記念写真からは、児童集団の全体の様子や職員構成の実際、育児院を訪れた要人について知ることができた。一方で職員によるスナップ写真には、職員のもとで遊ぶ児童の姿や入浴や食事の場面など養護実践をじかに伝えるものが多々あり、実践者本人による解説が添えられて一級の実践史資料が得られた。 研究作業 3:関連資料の収集 育児院所蔵資料から関連資料を発掘し閲読するとともに、宮城県図書館と仙台市図書館の資料室で資料を探索し、宮城県公文書館に資料状況を問い合わせた。これらの作業から、本研究に関連する文献の総括的な状況をつかむことができた。次年度に予定している個別の養護実践と照会する資料の発掘へつなげる下地を得た。
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