本年度の研究実施計画に沿って、以下のように研究作業を遂行した。 研究作業1:旧職員への聞き取り 前年度に継続して、永年勤続の元保母ら職員4名について行った。話し手を複数人にしたことにより、同じ事柄についても異なる側面からの語りが得られ、より複合的な理解を得られた。 研究作業2:写真資料の整理と電子処理、解説の聞き取り 新たに、逝去した旧職員所有の育児院関係のアルバム写真を電子処理し、解説を聞き取りした。写真の大半はスナップ写真であり、前年に整理した写真とは重複しないものがほとんどであった。自ずと、一人の施設職員の目から捉えた施設生活の一端が提示されることとなった。 研究作業3:関連資料の収集 前年度に引き続き、補遺的に、育児院所蔵資料から関連資料を発掘し閲読するとともに、宮城県図書館と仙台市図書館の資料室で資料を探索した。 研究作業4:育児院における養護実践を資料から裏付け、考察 聞き取り記録と写真資料・文書から、実際の生活や養護実践を浮かび上がらせた。また本研究者による宮城県における社会事業施設の研究に照会することで、育児院の実践の特性を整理した。「育児院100年史編纂委員会」を通しては、育児院の今日の実践への継承・変化を検証した。 成果発表:研究の成果を、日本社会福祉学会、みやぎ県民大学にて発表し、別記のとおり「施設史研究における聞き取り調査の役割に関する一考察-仙台キリスト教育児院における聞き取り調査をめぐって-」「施設の保育職は「お母さん」か-子どもの施設養護をジェンダーから読みとく-」としてまとめた。また聞取り記録とアルバムの写真ならびに解説を『仙台基督教育児院職員聞き取り調査記録 2004年度』として印刷中である。本研究の統括的な成果は、2005年5月の日本社会事業史学会において「仙台基督教育児院史にみる1930年代東北地方における施設養護実践」として発表予定である。
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