今年度は、研究期間の中間点にあたり、より実践的、実証的に研究を進めるため、筆者自身の後見活動を基に検証、検討を行うとともに、主として社会福祉士会・成年後見センター「ぱあとなあ」活動、および成年後見制度、後見活動に関わる社会福祉士への個別調査を実施した。あわせて成年後見制度の実状を把握し、課題の所在を探るために、統計データ等の検討を行い、日本成年後見法学会等の学会活動を通して弁護士、司法書士等関連専門職の後見活動に関しても情報を収集した。成年後見制度の定着度等を臨床的に検討するため、知的障害者施設における成年後見制度に関する説明会、地域での相談会に引き続き従事した。 1.成年後見制度の利用状況について 司法統計によれば成年後見制度利用件数は制度導入1年目より年を追う毎に増加している。しかしながら若年層の利用は未だ低率であり財産管理処分を目的とした高齢者層の利用が主要である。 2.知的障害者に対する後見活動の課題 多くの福祉サービスが利用・契約に移行し、また支援費制度見直しの中で地域生活支援が一層強調され、知的障害者に対する成年後見制度の適用はさらに拡充されなければならないところであるが、現実的には、申立てに係る費用負担の問題、長期にわたる後見活動に担い手の問題、複雑且つ多様なニーズをはらんだ身上監護のあり方、補助・保佐類型の利用伸び悩み等幾つかの課題が生まれている。 3.成年後見人としての活動とソーシャルワーク 筆者自身の後見活動および後見活動に関わる社会福祉士への調査を通し、成年後見制度におけるソーシャルワークのあり方を考察するとともに、知的障害者支援という観点から、ソーシャルワーク独自の援助技術成立の可否を検討した。
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