これまでの長期的フィールド研究では、沖縄の特定地域の出身者が移動先でさまざまに繋がっていく様子を時代の流れとライフサイクルとの交差に位置づけながら考察してきた。個々の結びつきは、村落から都市に移動するさいの足場を与え、両者を媒介する緩衝材となり、職業的社会化の現場を支えてきた。年月を重ねてからは、共通の出自と体験を振り返る集いの場が形成されてもいる。本研究では、「共同性の再編」という観点から沖縄出身者の移動と定着の過程を捉え、大阪、那覇、ハワイ等をフィールドにした現地調査を重ねるとともに、これまでの研究成果の比較作業をすすめ、個々の状況下で柔軟に編み出される多彩なコミュニティの具体的様相を考察する。 研究計画の2年目になる今年度は、ハワイ移民の子孫たちの繋がりを対象にした調査活動を中心に据えた。とくに、移民一世の夫婦を核として構成されてきた拡大家族のなかで、老年期を迎えている二世の位置と役割に注目した。2004年6月には、ある二世が両親の郷里を訪ねて親族と再会・交流する場面に立ち会い、数回にわたるインタビューを実施した。2005年3月には、2001〜2002年に実施したハワイ調査のさいに対象とした沖縄系二世が集ういくつかの現場を再訪して参与観察とインタビューを重ねた。具体的には、ハワイの沖縄系コミュニティの形成過程でそれぞれ重要な役割を果たしてきた次の3つの繋がり、すなわち(1)1970年代以後の沖縄文化復興期に結成された芸能集団群のひとつである太鼓踊りループ「ハワイ・パーランクー・クラブ」、(2)戦前から沖縄系の人たちが支えてきた浄土真宗系寺院「慈光園」、(3)沖縄戦後の救済活動を契機にまとまった「ハワイ沖縄連合会」である。 また昨年度に引き続き、戦後の那覇復興の過程で、対象地域の女性たちが集中した新天地市場という衣料品卸市場での補足調査を2004年12月に実施した。そして、これまでの調査研究の成果を、二編の研究論文としてまとめた。
|