研究概要 |
本申請研究は,集団が創造的アイディア創出活動をおこなう際の創発性発生メカニズムについて,社会心理学的な実験研究によって解明することを目的としている.特に,申請者らが既に提案している,集団の創発性における「多様性と類似性の相乗効果モデル」の発展を目指して,より精緻な検討をおこなうことが主眼となる. 平成15年度には,まず,上記相乗効果モデルにおける類似性と多様性の位置づけをより明確にするために,2つの実験的検討をおこなった.第1実験では,モデルを2名集団に適用した場合の妥当性の検証をおこなった.データ分析の結果,先行研究とほぼ同じ傾向が見られ,モデルの妥当性が確認された.第2実験では,2名集団による創造的なアイディア創出課題遂行の際に,成員のアイディア・プールのもつ多様性と類似性)に注目した上で集団によるアイディア創出をおこなうことが,パフォーマンスにどのような影響を与えるかを検討した.データ分析の結果,アイディア・プールの多様性に注目することが,成員相互の多様性を顕在化させ,集団の創造性パフォーマンスを高める可能性が示唆された. また,集団による創造的アイディア創出プロセスをより詳細に検討するための材料として,実験室における同課題遂行中の発話プロトコルを採集した.現在,撮影・録音データを音声認識ソフトウェアによって電子化処理し,プロトコル分析をおこなうための準備をおこなっているところである.今後は,知識共有による相互刺激が生じたと考えられるコミュニケーション・プロセスに着目し,そのコード化手法を検討する予定である.
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