本研究の目的は、ストレス状況の体験を他者に開示する過程、そしてその開示を受けた他者によってサポートが提供される過程を捉え、それらが精神的健康とどのように関連するかを検討することである。それによって、日常的な対人関係におけるサポートの授受がいかにして心身の健康に影響しうるのかというメカニズムへの考察をより前進させることを目指す。方法論的には、日誌形式による1週間程度の連続測定と月単位でのやや長い間隔での測定と組合せながら、日常のストレス経験とその開示、開示に対する相手の反応、相手からのサポート提供、相手のストレス体験に関する開示とそれに応じた相手へのサポート提供を把握し、それらと相手への対人感情や気分状態、さらに長期的な精神的健康度との関連を分析することを意図している。 そこで本年度は、3年間の研究の初年度として、主に2つの作業をおこなった。まず、第一の作業として、従来のソーシャル・サポート研究と自己開示研究とりわけストレス経験の開示に関する研究を統合するため、それぞれの先行研究に関する資料を収集し、用いられている方法論と基本的な知見を再確認し、それらをつなぐ理論的な枠組みについて検討した。第二の作業として、特に日常的な文脈でのストレス経験の開示とそれに伴う対人相互作用を中心とした自由記述形式の予備調査を実施した。これらのデータは現在分析中であり、その結果をふまえて典型的な開示場面と方法、被開示者の反応等をリストアップしている。そして、次年度に実施する調査のための調査票の作成および調査実施に向けた準備をおこなっているところである。
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