プロジェクト当初に申請した悪質性評価を規定する諸要因の一例として実施した、信号無視行動に影響する習慣性と急ぎ要因に関する観察研究については、2004年発行の社会心理学研究19巻に掲載される形で結実した。これは、毎日交差点を通っているなどの"慣れ要因"と"急いでいること"が信号無視行動にどう影響するかを検討したもので、これまで得られてきた周囲のとる行動への盲従以外に、初めて交差点を通る歩行者は周囲につられつつも慎重な行動をとるといったジレンマ的判断を見せるといった、いくつかの興味深い知見を提示することができた。また、その次のプロセスとして行っている交通違反の悪質性研究について、同年開催された社会心理学会にて概要を発表し、グループダイナミクス学会で行われたシンポジウムでも話題提供を行った。 交通違反の悪質性評価に関する研究は、現在免許歴との関連を見るべく縦断調査を実施しており、学生が入学してから卒業するまでの4年間の変化を追ってきた。データ取得を終え、現在分析中である。ここで得られた成果については国内雑誌に投稿する予定であるのと同時に、7月にギリシアで開催される国際応用心理学会議で発表する予定である。このプロジェクトでは、単純に交通違反の悪質性だけを検討するのではなく、社会性の発達の指標ととらえている社会考慮尺度との関連や、組織の中でよりよいメンバーとして振る舞う程度を測定する組織市民性などの評価項目とあわせて現在調査の実施・データの解析を進めている。
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