研究概要 |
低自尊心者が採る安心さがし行動が、他者からの拒絶を引き起こすことが先行研究において明らかにされている(長谷川・浦,2002)。逆に、高自尊心者が安心さがし行動を採っても、他者から拒絶されない。本研究の目的は、このような安心さがし行動が他者からの拒絶を引き起こす過程と引き起こさない過程の違いを明確にすることである。 今年度は、この安心さがし行動が他者からの拒絶に及ぼす影響過程について、他者の自尊心レベルという新たな要因に焦点を当てた検討を行った。近年、低自尊心者の不適応を維持・促進するプロセスに、他者の自尊心レベルが関連していることが明らかにされた。すなわち、低自尊心者が高自尊心者と友人になった場合、その友人からあまりポジティブに評価されていないと感じ(反映的自己評価の低下)、さらに抑うつ傾向が高まることが示されたのである(長谷川・礒部・浦,2003)。 これらの知見と低自尊心者の安心さがし行動に関する知見を併せて考えると、低自尊心者が高自尊心者と友人であり、その人に対して安心さがしを行った場合、特に拒絶を引き起こすことが予測される。すなわち、反映的自己評価の低下や抑うつ傾向の高まりは、低自尊心者が高自尊心者の友人に対して採った安心さがし行動の結果引き起こされた可能性があると考えられる。 今年度の研究では、このような予測を検討するために、自己と友人とのペアを被調査者としたパネル調査を行い、安心さがしが他者からの拒絶に及ぼす影響過程について検討した。検討の結果、予測と一致する結果が得られた。すなわち、低自尊心者の友人が高自尊心者である場合、安心さがし低群よりも高群の方が他者からの評価が低下することが明らかにされた。この結果によって、安心さがし行動が他者からの拒絶を引き起こす過程は、安心さがし行動を低自尊心者が採り、その相手が高自尊心者である場合に、特に顕著になることが明らかになった。
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