研究概要 |
本研究では,客観的パフォーマンスを指標とした注意機能検査を開発し,注意能力の定量化を試みる.開発にあたっては生態学的妥当性を重視し,児童生徒にとって親しみやすい刺激材料を用い,かつ,学校での授業場面をシミュレートした検査場面を設定する.授業場面との類似性を考慮し,検査は集団で実施する.検査では,5種類の注意機能に対応させて以下のような注意機能を要求する課題を作成した.持続的注意:刺激出現頻度がきわめて低い退屈な検査場面において,まれに出現する刺激をモニタリングし続ける.選択的注意:妨害刺激を無視し,標的としてあらかじめ指定された刺激だけを選び取らせる.注意の統制/切替:一定の規則に従った反応が成立した後,規則を次々変化させ,それに応じた反応を要求する.注意分割:視覚刺激と聴覚刺激を同時に提示し,それぞれの刺激に応じた反応を同時に求める.反応抑制:すでに確立している優先反応を抑制することを求める. 開発した注意機能検査を長野県内の中学生に実施し,標準化を試みた.長野県内の中学校の各学年3クラス40名程度(計360名)を対象に検査を行い,それぞれの注意指標について学年ごとに素得点を評価点(M=10;SD=3)とパーセンタイル順位に換算するための対照表を作成した.また、妥当性の検証のため注意機能検査を受けた中学生の日常行動をもっともよく知る立場にある担任教師に,学級内生徒の注意に関わる問題点についてチェックリスト形式で評定を求めた.注意機能検査の各指標とこの評定値との相関を分析することにより,検査の基準関連妥当性を検証した.
|