平成15年度の本研究は以下のように展開した。(1)(2)(3)は基礎的研究であり、それらに基づいて(4)(5)の応用的研究がなされた。 (1)内外の大学授業研究および授業観に関する研究について、文献研究をおこなった。その結果、大学授業観の多様性の発生メカニズム、大学授業観の授業過程等への影響、さらには大学授業の「異化」場面を検討する際に、「大学授業フレーム」概念を用いることが有効であることが明らかになった。 (2)一般的な一斉授業である京都大学公開実験授業「ライフサイクルと教育」の1時限をVTRに撮り分析し、また授業者へのインタビューもおこない、授業者の授業観(「大学授業フレーム」)が現れている箇所の検討をおこなった。これによってミクロな場面における「大学授業フレーム」の授業過程への影響、「大学授業フレーム」の調整・変容の様相が明らかになった。 なお、上記(1)(2)の成果の一部は『京都大学高等教育研究』等に掲載した。 (3)FD活動の類型化をおこない、授業者の授業観(「大学授業フレーム」)の交換を促すFDはどのようなものかについて検討をおこなった。「啓発型」「モデル伝達型」「ファカルティ連携型」「反省型」のFDに比して「ネットワーク志向型」のFDがそれに適すると考えられた。これらの成果の一部は『日本教育工学会論文誌』等に掲載した。 (4)(1)(2)(3)における議論に基づき、大学教員間の学び合いのためのWebサイト「ひまわり」をメディア教育開発センターの研究者と共同で試験的に構築した。現在、本サイトにおける発言等の分析をおこないつつある。 (5)異なった文化を持った大学間の遠隔授業(京鳴バーチャル教育大学プロジェクト:KNV実践)を実施し、そこにおける教員間の学び合いについても、現在、分析をおこなっている。
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