本研究は、母親が子育てのなかで当たり前に経験する感情として、子どもに対する不快感情を取り上げ、親としての適応プロセスについて検討することを目的としている。研究の対象となるのは、東京都および近郊に在住の母親42名で、3ヶ月ごとに、各家庭を訪問し、母親への面接を行った。本研究では生後2年目までに得られたデータを中心に検討する。分析のおもな対象となるのは、面接における質問「お子さんのことをイヤになることがありますか」に対する母親の語りである。 2003年度は主に、得られた面接の逐語録作成を行った。逐語録をもとに、生後2年目の不快感情の内容などについて分析した。その結果、この時期の母親の語りの特徴として、子どもの自己主張に関する語りがあることが明らかとなった。さらにその語りは、内容的に、15ヶ月から18ヶ月あたりにみられる"自己主張の芽生え"に関する語りと、18ヶ月以降にみられる"はっきりとした自己主張"に関する語りというふたつに分けることができた。子どもの自己主張は、おとなの真似をしたり、自分ひとりで何でもしようとしたりする、子ども自身の興味関心のあらわれ、または自分のしたいことがかなえられないと駄々をこねることとして語られ、その後「これがしたい」「それはイヤだ」というはっきりとした子どもの意思表示として語られるようになった。分析の結果を、2003年9月に行われた、日本心理学会第67回大会にて発表した。 また、フォローアップの質問紙を、対象児が6歳を迎える前後に郵送、回収を行った。質問紙の内容は、最近の育児状況、子どもの変化、家族の変化などである。今回得たデータは、分析の補助資料として使用する。 <予算との関係> 逐語録作成のテープ起しのためのアルバイト代、分析のためのパソコンソフト、ダビング用ビデオテープ、カセットテープ、質問紙の郵送代などとして計上、使用した。
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