(1)遊び場面における幼児同士の日常のやりとりデータの分析 昨年度に引き続き、幼稚園で収集した幼児同士の自由遊び場面のビデオ観察データを用いて幼児期の子ども同士の「意図」と「感情」の共有プロセスの分析を行った。ビデオデータをパソコンにとりこみ、互いの意図が見えてくるエピソード、共感性を示すエピソードを微視的に分析することを試みた。「意図」を共有したり「共感」したりすることは、単にコトバでのやりとりでのやりとりが成立し、頭の中の表象的なものを伝達することではなく、視線をあわせたり、同調するような動作等も含めた一方向的ではない場における相互構成的な出来事である様相が見いだされ始めた。 (2)新たなデータの収集と分析方法の探究 幼稚園でフィールドワークを行う中で、子どもたちが他者との「意図」や「共感」の共有についてどのように認識しているかを、従来の「心の理論」とは異なる形でとらえることが可能であるかどうかの検討を行った。フィールドワークを続け、出会った出来事を記述し続ける中で、筆者は、子どもの遊びを記述するとき、自分の視点からだけではなく、保育者や保護者の視点からも検討することとなり、外側から子どもたちの行為のみを記述していた筆者の視点は、次第に対象の内側へも入り込み始めた。研究者自身の感情も含めた出来事のつながりを「物語(ナラティブ)」として記述し探究することで、そこに記述されるエピソードが子どもたちの意図や感情の共有のありかたを探究することにつながっていることが実感された。
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