研究概要 |
本年度は,内外の研究の詳細な文献的検討に加え,攻撃性の3タイプ(反応的表出性攻撃,反応的不表出性攻撃,道具的関係性攻撃)と社会的情報処理過程のうち反応評価過程を中心にその特徴を明らかにし,また合わせて,反応評価過程に感情処理過程を盛り込み,その詳細な特徴を検討するための調査を実施した.内外の研究の文献的検討については「攻撃性概念の細分化と形成過程(美作大学紀要論文)」としてまとめられた.調査については小学児童を対象に児童用P-R攻撃性質問紙と共に,本研究のために作成した質問紙を実施した.この質問紙は疑似事態において,攻撃行動喚起事態を設定し,攻撃行動の与え手と受け手の反応を規定する質問紙(攻撃事態評価紙)である.反応の正当性や結果の予想評価を含む反応評価を測定した.また,感情についても攻撃の受け手への共感感情の有無,また攻撃行動の受け手の感情状態の推測など,多面にわたる感情処理過程を測定した.表出性攻撃・関係性攻撃の各攻撃性が高い児童は低攻撃児に比べ,攻撃行動喚起事態での攻撃行動の社会的情報処理(反応評価)に歪みを示したが,特に高関係性攻撃児の社会的情報処理の歪みは多岐にわたり,彼らが学校現場での問題となる可能性を示唆した.さらに,高関係性攻撃児は相手から実際に被害を受けるという,攻撃行動喚起事態の程度が高い場合に相手に対する共感を低下させており,それが彼らが関係性攻撃行動を実際にとる一因である可能性が示された.
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