研究概要 |
平成15年度は,Wasonの2-4-6課題において,2つの仮説を相対化する観点の棄却可能性(背理関係)を仮説相対化方略によって認識した場合にフィードバック関連陰性電位(FRN)が増大するかどうかを検討した. 実験1 方法 対象者:大学生8名.課題と手続き:被験者は2-4-6課題を改変した課題を行った.1ブロックは20試行からなり,奇数試行では仮説があらかじめ記入されていた.被験者はその仮説に当てはまる具体例を記入し,真の法則に当てはまるかどうかのフィードバック(FB)を受けた.FBは,被験者がボタンを押すことによってディスプレイ上に呈示された.偶数試行では,前試行の対立仮説も被験者自身が考え,具体例に対するFBを受けた.計10ブロック行った.脳波の測定と分析:脳波は,両耳朶の平均電位を基準として,前頭部,中心部,頭頂部から導出した.FBを与えた時点を基点(0時点)として脳波をFB前200msからFB後800msまで加算した.瞬き等のアーティファクトが混入した試行は分析から除外した. 結果と考察 FRNの振幅(前頭部)は,ある仮説を単に確証した試行と2つの仮説の背理関係を認識した試行との間でほぼ同じであった.しかし,仮説相対化方略を十分に意識的に使えていなかった可能性が内観報告から考えられた. 実験2 被験者が2つの対立する仮説の背理関係を十分に認識できるように思考過程を誘導した. 方法 対象者:大学生9名.課題と手続き:2つの仮説の背理関係を認識させる文を2-4-6課題に挿入したことを除いて,基本的に実験1に同じ.脳波の測定と分析:実験1に同じ. 結果と考察 FRNの出現潜時帯であるFB呈示後200msから350ms付近の振幅が,仮説を単に確証した試行よりも2つの仮説の背理関係の成立を認識した試行のほうがより陰性であり,そのような背理関係の認識がFRNに反映されることが示唆された.
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