研究概要 |
本年度の研究では,抑うつ・不安傾向と認知的失敗低減方略利用頻度の関連について,抑うつ・不安傾向が方略に対する認知にどのような影響を及ぼしているかについて検討した. 【方法】 調査対象:質問紙に不備のあった者を除いたT大学学部学生210名(男92名,女118名)を分析対象とした. 抑うつ・不安測定:BDI(林,1988)とSTAI日本版(中里・水口,1982)によって抑うつと不安を測定した. 失敗低減方略利用頻度測定:失敗低減方略利用頻度尺度(山中,2002)を用いた.この尺度は,"外的記憶補助","記憶術","時計・携帯利用","指差し","確認"という5つの下位尺度から構成されている. 失敗低減方略利用頻度の認知:失敗低減方略利用頻度尺度について,6件法にて有用感(全く役に立たないと思う〜非常に役に立つと思う),コスト感(全く大変ではないと思う〜非常に大変だと思う)について評定させた. 【結果と考察】 群の設定:平均値を基準に,BDI得点が12点以上の者を抑うつ高群,11点以下の者を抑うつ低群とした.またSTAI得点が54点以上の者を不安高群,53点以下の者を不安低群とした. 抑うつ・不安傾向と失敗低減方略の有用感との関係:失敗低減方略利用頻度尺度の有用感について,抑うつ・不安を要因とした分散分析を行なった.その結果,不安高群が低群に比べて"外的記憶補助"を有用だと感じていることが明らかとなった.また低不安である時に抑うつが低いよりも高い場合に"指差し"を有用だと感じていることが明らかとなった. 抑うつ・不安傾向と失敗低減方略のコスト感との関係:失敗低減方略利用頻度尺度のコスト感について,それぞれ抑うつ・不安を要因とした分散分析を行なった.その結果,"時計・携帯利用","指差し","確認"いずれの方略においても,不安が低い時よりも高い場合に利用が大変だと感じるという傾向がみられた.
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