研究概要 |
【目的】アトピー(AD)患者特有のストレス心理状態は、単に掻破行動の惹起ばかりでなく、ADの皮疹そのものを悪化させるのではないかと考えられており、ADの発症ないし増悪因子の一つとして注目されている。さらに、認知行動療法によるストレス低減効果がAD症状も軽減すると期待される。本年度は認知行動的介入のパッケージ作成に関して一層の手がかりを得るためにADストレスモデルを探索する。 【方法】インフォームドコンセントを得た男女大学生計828名を調査対象とし、下記の調査を実施した。心理的ストレス反応測定尺度(SRS-18:鈴木ら、1997)。3次元モデルにもとづく対処法略尺度(TAC-24;神村ら,1995)。学生用ソーシャル・サポート尺度(SESS;久保ら,1989)。日本語版アレキシサイミア尺度(TAS-20;大平ら、2004)。 【結果】1)患者の属性:健常群642名(79%)、幼児完治群101名(12.4%)、幼児発症群41名(5%)、寛解増悪群11名(1.4%)、成人発症群18名(2.2%)。2)AD群のストレス特徴:心理的ストレス反応では、成人発症型は、ほかの群と比較して、抑うつ・不安、怒りが高く、攻撃性が強い傾向があった。対処方略尺度では、8因子仮説で解析を行ったところ、AD群の「気晴らし」の因子の高得点が有意であった。学生用ソーシャル・サポート尺度では、成人発症型はほかの群と比較して「父親への援助感」と「母親への援助感」を高く持っていた。「友人・知人への援助の期待感」については、成人発症型は、「友人・知人への援助感」を高くもっていた。また、アレキシサイミア傾向については、寛解増悪型、成人発症型は他の群と比較して、アレキシサイミア傾向者の存在が多く、相対的に感情表現が苦手であると考えられた。以上のことから、ADのCBT介入のためにはリラクゼーションやコーピング指導、対人関係療法、感情表出技法を中核とするよう提案したい。
|