研究概要 |
本研究は,日本の現状に合わせ,文化的背景を考慮した社会不安障害(Social Anxiety Disorder : SAD)に対する集団認知行動療法プログラムの開発と実施を試み,治療効果を心理・行動的指標にて検討することを目的とする.これまで,SADには全般性と非全般性というサブタイプがあると指摘されている.日本でも古くからアジア諸国に特有のタイプTaijinn Kyofusho(TKS,白分の振る舞いや外見が他者に害を与えることに対する恐怖)が報告されている.先行研究を踏まえて,平成15年度は,一般成人および医療機関を受診したSAD患者を対象として調査を行い,本邦におけるSAD症扶の特徴,および,サブタイプを明らかにする.また,先行研究の結果に基づいて治療プログラムの最初の段階である患者教育の内容を確立する. 首都圏およびその近辺,北海道の私立大学生654名(男性270名,女性380名,不明4名.平均年齢:20.40±2.28歳)を対象に講義中にて自記式調査を行った.調査は,「社会的状況での自分の振る舞いを評定する」という教示のもとに行われた.質問項目は(1)SPS, SIAS(Mattick & Clarke, 1998),(2)TKSS(Kleinknecht et al., 1994),(3)LSAS日本語版(朝倉他,2002),(4)FNEの短縮版(笹川他,2003)を用いた.本研究の結果から,本邦におけるSADの特徴としては,他者に見られているときに不安を感じるタイプと,対人場面で不安を感じるタイプ,および,TKSが見られ,各タイプは上位概念(社会不安や恐怖)を共有するものの,それぞれ特徴があることが示された.また,これらの特徴を検討すると同時に,症状と治療法,症状の形成と維持のメカニズム,症状に対処する技法の説明をSAD患者に対する心理教育の内容として確立した.
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