研究概要 |
行動変容のThe Transtheoretical Model(トランスセオレティカル・モデル:TTM; Prochaska & DiClemente, 1983)は,対象者を行動変容に対する準備性の違いに応じた介入を実現することを目指した統合的・包括的なモデルであり,近年様々な健康行動に適用されている. 骨粗鬆症の治療と予防には,投薬だけでなく,適度な運動やカルシウムの多い食事習慣など複合的な健康行動を習慣化することが重要な意味を持っている.本研究では,骨粗鬆症患者のライフスタイル改善に行動変容のTranstheoretical Modelを適用するための基礎研究を行うことを目指しており,本年度は第一段階として,研究基盤の整備を中心に進めた.具体的には,骨粗鬆症患者が管理すべきライフスタイル行動の具体的内容を整理し,それらが実際にどの程度正確に把握されているのか検討することを目的とした. 老年医学・老年心理・健康心理の専門家からなる研究会を構成して,管理すべきライフスタイルや持つべき疾患の知識について討論し,34項目からなるリスト原案を作成した. 尺度項目内容の確認のために,高齢者約70名を対象として予備調査を実施した.予備調査の結果を基に,非専門家にもわかる表現で,疾患の治療や予防に役立つ行動や知識をまとめた.そして,高齢患者を含む約370名の成人男女を対象に調査を実施し,最終的に,骨粗鬆症患者のライフスタイル改善に必要不可欠な14項目を選定した.また別途,地域に居住する骨粗鬆症患者の心理的特徴について調査を実施した. 次の段階では,TTMを構成する,行動変容のステージ,セルフエフィカシー,意思決定バランスといった変数を測定する尺度を整備し,最終的に実際の介入に役立つモデル構成を行う作業を順次進める計画である.
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