平成16年度は以下のように治療モデルの構成、および治療効果の検討を実施した。 (1)治療モデルの実証的・統計的検討 これまでの研究から治療的価値が高いことがしさされているライフイベントや対人関係の経験頻度が、抑うつ的認知過程の変動にどの程度関与するのか検討した。資料は長期間(半年)にわたる縦断的資料である(現在、分析中)。関与すると仮定される要因は、他者への不適切な自己開示、他者による拒絶的対応の頻度、肯定的または否定的対人ライフイベント量、および対人ライフイベントの絶対量、また行動傾向として自己没入傾向、社会的スキルの発揮、他者操作方略の頻度、他者に対する再保障の希求、ポストフェストウム的過去志向認知傾向、さらに新年傾向として甘えの断念性、などである。 (2)心理療法による被受容感へのアプローチ(来談者中心的認知療法)の構成と効果の事例検討 複数の心理療法の症例(事例)から、来談者中心的治療態度→被受容感へのアプローチ→来談者の気分の安定→認知過程の肯定的変容、という一連のプロセスを検討した。この方法を来談者中心的認知療法(学会発表では来談者中心的認知志向アプローチ)とし、検討した青年期の事例には非常に有効であることが示された。 (3)他者注目操作の実験的検討 自己注目の持続が抑うつを増強することが知られているが、実験的に他者注目に誘導した際の気分の変動を検討した。注目する他者は重要な他者であるが、関与する変数として重要な他者との現在の関係性(有無の2水準を考慮した。結果として、重要な他者との関係性が現在もある場合には、重要な他者への注目で気分が肯定的に変動することが明らかになり、他者注目による抑うつの軽減効果が示唆された。 (4)アセスメント方法の考案 被受容感へのアプローチは来談者が希求する対応を治療者が理解し、場合によっては実行する必要がある。希求する対応のアセスメントにMillonのパーソナリティ理論とDSMのパーソナリティ障害分類法を応用して、アセスメントする方法を提案し、アセスメントの有効性を事例から検討した。
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