研究概要 |
Ironic Process Theoryでは、思考を意図的に統制しようとするとむしろ逆の効果をもたらされるという現象を説明している。睡眠障害や不眠についてもこの現象が注目され、入眠時の思考統制について検討されはじめた。これに対して、行動分析学の視点から新しい介入方法が提唱されている。この臨床的介入方法はAcceptance and Commitment Therapy (ACT ; Hayesら,1999)と呼ばれている。 本年度は、まず、入眠時に浮かぶ思考に対してどのような対処を行っているか調べるために、Harvey(2001)のTCQ-Iにより調査を行った。対象は大学生157名とした。因子分析の結果、思考妨害、思考の再評価、否定的な自己焦点化の3因子が関与していることが明らかになった。さらに、各因子で因子得点を基準に低得点群と高得点群を抽出し、睡眠の諸様相の違いについて検討した。否定的な自己焦点化では、高得点群は低得点群と比較して睡眠の質が低いこと、思考妨害、思考の再評価については、睡眠の質や睡眠リズムに関係がないことが示され、Ironic Process Theoryを支持する結果が得られた。今後、この調査結果をもとに研究を進め、臨床場面における入眠時思考統制と睡眠リズムとの関係を検討することが課題として挙げられた。 一方、Hayesら(1999)や、申請者(高橋ら,2002)はACTが推奨するAcceptance方略の効果を実験により検証している。これらの結果をもとに、本年度はacceptance方略を中心としたACTの諸技法の効果について、新たに生理的指標を含めて予備実験を実施した。その結果、実験手続きの修正をした上で、acceptance方略と提示刺激との関係や、方略獲得過程についての検討が必要であると示唆された。
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