研究概要 |
1.東欧の災害後の状況視察と救援者のストレス等の情報収集(ハンガリー:ブタペストのNational Institute of Mental Healthやペーチ大学)、英国:ロンドンのTraumatic Stress Clinicにおける救援者の災害ストレスヘの予防やケア等の現状を把握し、情報交換等を行なった。同時に、1997年に発生した鹿児島県北西部地震、同年出水市土石流災害によるストレス(PTSD,CIS)の発生状況とケアの現状等について研究発表をした。海外視察ならびに研究発表に際しては、研究協力者(災害ストレス研究の第一人者である久留一郎氏)から専門的知識の提供、海外研修のコーディネート等の支援を得ることができた。 2.救援隊に対するメンタルヘルス対策についての実態を調査した。その結果、K県消防署等においては、PTSD(外傷後ストレス障害)、ならびにCIS(惨事ストレス)に対応できる専門家は常駐しておらず、通常のメンタルヘルス等に対して保健師等が応じていた。しかし、毎年、定期的にPTSDやCISの専門家を招聘し、研修会を行っていた。海上保安本部では、スマトラ沖地震後のレスキューに携わった保安官へのPTSDならびにCIS発症の予防等を実施していた。 3.平成15年度に実施したアンケート調査の結果については、SPSSを用いて、惨事状況とストレスとの相関についてクロス集計を行った。その結果、「悲惨な光景や状況に遭遇した」88.0%の消防署職員は、動揺、感情移入、疲労、怒り・不信感、無力感、身体の不調と相関がみられた(P<0.05)。さらに、「ひどい状態の遺体を目にした、あるいはかかわった」79.4%の消防署職員は、疲労感、身体の不調を訴えていたことが明らかになった(P<0.05)。業務後に安心して気持ちを解放できる人の存在、職場や家族の理解やあたたかい雰囲気、心身ともに休養できる時空間が重要であることが示唆された。
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