研究概要 |
小学校5年生の音楽鑑賞授業を利用し、以下のような実験授業を行った。構造の明確な楽曲(3部形式)を教材として使用し、楽曲を提示した後、楽曲の感情価に関する5つの項目の評定(明るく楽しい感じ、暗く悲しい感じ、優しく穏やかな感じ、とても強く激しい感じ、軽やかで軽快な感じ、を各5段階で)と自由記述(気づいたこと感じたことについて)を行わせた。同様の実験を大学生対象にも行い、小学生と大学生の比較を行った。評定値に関しては学年の主効果がいくつかの項目で認められた。一般に小5生の評定値は大学生より高く、特にいくつかの曲の"強激""軽快""暗悲"項目で有意差が認められた。ただ、5年生と大学生の評定値には強い相関が認められたので(VA:.95,A:.92)、全体的なパターンはほぼ同じといえる。自由記述については、楽曲の特徴について記述した一まとまりを1単位とし、各記述1単位を8つのカテゴリー(感情、比喩、音量、速さ、楽器/音質、構造、曲の評価、既知性)に分類して集計した。全体的な記述数については、当然大学生の方が多かったが、各学年ごとにどのカテゴリーの産出頻度が相対的に多いか調べたところ、小5生では、音量と構造に注目する記述や比喩表現の割合が大学生よりも多く、一方、感情的性格、速さに注目する記述は大学生よりも少なかった。小5生は一般の大学生と比べて、音楽の諸特性を知覚認知する能力はほとんど変わらないが、注意を向ける属性はやや異なることが示唆された。
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