研究概要 |
本年度はブタのオペラント条件づけについて検討した。 まず,自由オペラントと呼ばれるレバー押しによる報酬の獲得事態において,産業的な飼育条件における給餌量に制限を加えない条件下での反応率のセッション内低下について検討した。その結果,3.4gの固形餌による強化を,500程度獲得するまでは反応率が完全に安定していることを見出した。この結果は,繁殖動物として飼育されるブタに対する標準的な給餌量を超えても,ブタにおける報酬性のオペラント条件づけによる行動制御が可能であることを示すものである。また,ラット等に関する従来の研究とは異なり,報酬量の変動は反応率のセッション内低下を抑制しなかった。これらの知見については,『動物心理学研究』に投稿中である。 レバー押しによるオペラント条件づけの検討過程で,報酬獲得に要する運動コストを節約するための「餌のため込み後の採餌」という反応方略をブタが示すことを発見した。この知見について『動物心理学研究』に発表した。この行動に関する検討を継続し,餌のため込み行動の大きさが,レバーと餌箱の距離によって変化することを明らかにした。さらに,特定の範囲のレバー押し行動のみが強化される事態において,ブタはかなりの精度で自らの行動を制御可能であることが示された。具体的には,6-7回のレバー押しのみが強化される事態において,50%以上の反応をこの範囲に収めることが可能であった。これらの知見は,オペラント条件づけを用いた高度な行動制御がブタにおいて可能であることを示唆するとともに,ブタが強化条件や自らの行動の調整に関して高度な認知能力を有する可能性を示すものであると考えられる。 これらのブタの学習に関する研究活動の概要について『基礎心理学研究』に発表した。
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