知覚学習では、与えられた刺激に含まれる情報の量および質が、学習達成度に影響を与える。したがって、学習達成度の評価を、その時点までに与えられた刺激に含まれる情報との対比の上で行うならば、より詳細に学習過程の検討が行えるだろう。本研究は、このような視点に立ち、逐次効率分析という新たな研究手法を導出し、これを知覚学習の研究に適用することを目的とするものである。 本年度は、逐次分析と従来の効率分析に基づいて、逐次的効率分析を理論的に導出するとともに、これを、モザイクパターンの教師あり学習に対して適用した。学習者(被験者及び理想的観察者モデル)には、プロトタイプ(白-黒モザイクパターン)にガウス分布に基づく輝度ノイズを加えたパターンを経時的に提示した。そして、被験者及び理想的観察者モデルは、自らの反応に対するフィードバックを手がかりとして、パターンの学習を行った。すなわち、この学習過程では、学習者にはexemplar(ノイズを含むパターン)のみが提示され、プロトタイプを提示されることはない。これは、日常生活における言語学習等さまざまな学習と対応する実験状況といえよう。この研究の結果から、人間がかなり効率良く情報の蓄積を行っていること、そしてそのために、情報の集約を常に行っていることが示された。 さらに、パターン学習に必要な情報の蓄積および集約にかかる注意コストを調べるために、上記の課題を、他のモザイクパターンの平均輝度の識別課題と組み合わせた2重課題を行った.その結果、学習課題と識別課題(第2課題)の遂行効率の時間的推移の位相には差が見られることが示された。そして、この位相差は、学習課題の難易度によって異なっていた。これは、客観的指標(成績)によって確認される学習成立時から、注意が開放されるまでの時間が、課題の難易度によって異なることを示唆している。
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