本研究では、視覚パターン学習の動的プロセスを検討するために、逐次効率分析を行った。逐次効率分析とは、従来の効率分析を、動的プロセスに適応可能な形に拡張したものである。これによって、学習のプロセスを情報利用率の変化という側面から検討することが可能となる。 実験:被験者は、3×3または4×4の白黒モザイクパターンを学習することを求められる。学習に際しては、常に異なる輝度ガウスノイズ(グレースケール)を加えたパターンを提示され、プロトタイプが被験者に提示されることはない。すなわち、被験者は、自らの反応に対するフィードバックのみを手がかりとして、プロトタイプ学習を行うこととなるが、正しいプロトタイプ(すなわち正解)が被験者に提示されることはない。このような課題の遂行について、ベイズ学習を行う理論的学習者の成績と人間の成績との比から、統計的効率を算出した。 結果:学習初期段階では情報の蓄積効率が高いが、ある程度学習が進むと、学習効率は自動的に低下することが示された。なお、今年度行った実験では、被験者に同時に与えられる課題は一対のパターンの学習のみであるため、学習効率を低下させることが全体としてのパフォーマンス向上に有利に働くということはない。また、上述の学習状況下で得られた統計的効率と、プロトタイプを提示した上でのパターン識別状況下で得られた統計的効率とを比較したところ、学習状況下で得られた統計的効率は、パターン識別状況下で得られた統計的効率よりも20%程度高いことも示された。これらの結果を受けて、当該課題遂行のニューラルネットモデルを作成し、その重み付け変化と効率変化との関係を検討した。
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