研究概要 |
後催眠健忘暗示の潜在記憶への影響について実験心理学的研究がこれまでにも行なわれてきた.このような研究においては,被験者数の確保や実験に要する時間など実験場面についても制約条件が多いため,刺激の統制には特に厳密さを要する. しかし,これまでの研究は,事前の刺激の統制について必ずしも十分とはいえない.そこで本年は,催眠条件下での厳密な刺激統制を目的として,非催眠下での潜在記憶に関する実験を行った. 実験は,講義中の大学生128名に対して集団式で行なった.被験者にまず,藤田(1998)から選択した32項目の清音5文字の名詞について,熟知度について5段階で評定させた(プライム課題).評定約1時間に,32項目のフラグマントリストを配布し,単語完成課題を行わせた.このフラグマントリストには,完成すると熟知度評定リストに含まれていた名詞となるようなフラグマントを8項目が含まれていた. これらの刺激項目について,先に熟知度評定をした場合(プライミング時)と熟知度評価を行わない場合(ノンプライミング時)を比較すると,単語フラグマントの完成率に有意な違いが認められた(t(126)=113.32,p<.01).また,刺激項目ごとに比較すると,刺激項目によってプライミング効果が認められやすい項目と認められにくい項目があることが示された. 今後は,後催眠健忘暗示の潜在記憶に与える影響について検討する際に,本実験により得られたプライミング効果の認められやすい刺激項目を用いることで,後催眠健忘暗示の影響の有無をより厳密に検討することができると考えられる.
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