研究概要 |
動物の情動特性の測定・評価法の確立は、薬理学におけるリガンド開発や、遺伝子改変動物研究からの要請を受け、心理学以外の分野においても緊急性を要する研究課題の一つとなりつつある。本研究の目的は、マウスにおいて情動の総合評価が容易に行えるようなデータ分析法を確立することである。平成15年度は、異常個体を検出するためのテストバッテリー構成のために、複数の行動テストのプロトコール確立を行った。本年度に立ち上げを行ったテストは、ホームケージにおける自発活動のモニタリング、オープンフィールドテスト、明暗往来テスト、新奇物体探索テスト、恐怖条件づけ、驚愕反応強度の測定の5つである。このうち、ホームケージにおける自発活動の測定とオープンフィールドテストについては、C57BL/6J, DBA/2JおよびそれらのF1、各50匹以上を用いたデータ分布の検討が終了した。いずれの系統においても、これらのテストのデータはきれいな正規分布を示し、明確な系統差を検出できたことから、ホームケージにおける自発活動測定とオープンフィールドテストはテストバッテリーへの採用可能と判断した。その他の課題については、これからデータ収集を行う予定である。また本年度は睡眠量.睡眠潜時のモニタリング用に、脳波・筋電テレメトリーシステムの立ち上げも行った。次年度は、本年度中に立ち上げた実験系を用いて収集したデータをもとに、多変量解析による情動指標の整理と各系統に特徴的な情動プロフィールの抽出を試みる予定である。
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